大谷翔平選手の50-50ボールに化体した価値は何か?

 2024年919日、大谷翔平選手がメジャーリーグ初となる、1シーズン50本塁打と50盗塁を記録した。そのホームランボール(以下「50-50ボール」、現地では「50/50」と表現)が高額オークションで話題になっている。オークションに至るまでの所有権争いについては、他のサイトを参照いただくとして、ここでは、50-50ボールに化体した価値は何か、考えてみたい。

 

オークションサイトの大谷翔平選手の50-50ボール

出所:Goldin (2024年10月18日参照)

 

物としての価値は使用済ボールとして新品より低下する

 硬式野球ボールの新品の値段は、日本プロ野球公式ボールが約3千円~である。一般的にボールの類は中古や再利用品は安くなり、例えばゴルフのロストボールなどは新品の数分の一の値段で販売されている。野球のボールは使用すれば汚れたり変形したりして、物としての価値は下がる。

 この50-50ボールも、単なる物としての価値は、日本円で千円にも満たないかもしれない。では、50-50ボールに化体している価値は何か。

 物としての価値が相対的に高くなるケースとしては、希少性のある物や代替不可能な物、例えばレアなポケモンカード、販売が終了して長年経ったヴィンテージカーやデニムなどがある。

 

化体している価値は何か?

 50-50ボールは、著作権法に照らしてみると、著作物ではない。歴史的価値からすると古美術品ともいえるが、言葉の響きがしっくりこない。通常のサインボールであれば、会計上「記念品」として扱われる。物に化体する無形資産としては、ユニフォームの様に商標やブランドも考えられるが、50-50ボールは該当しないだろう。

 50-50ボールを購入した場合の会計処理を考えると、「歴史的価値又は希少価値を有し、代替性のないもの」に該当することから、化体した価値は、固定資産のうち有形・無形固定資産に含まれない「投資その他の資産」とも考えられる。高額であり、価値が落ちることはないだろうから、経費処理や減価償却はできないと考える。

 ちなみに、資産の金銭的価値を算出する方法としては、コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチなどが一般的であり、知財・無形資産の価値評価手法としても用いられる。50-50ボールについては、オークションになっているので、会計的にはマーケットアプローチによる客観性が担保された適正価格として取り扱われるはずだ。

 

価値があることは確かであるが、その価値の正体がわからない

 50-50ボールの価値は、物と一体不可分な資産価値があることは確かであるが、一体何が化体しているのかよくわからない。ChatGPTに様々観点から問い掛けをしたが、腹に落ちる回答は得られなかった。

 話は変わるが、弊所では所長コラムとブログが存在する。専門的かつ有益な情報が一定量あると考えられる内容についてはコラムとして、日常で気になった出来事や書籍や論文などの案内はブログとして使い分けている。今回の50-50ボールについては、コラムの題材として書き始めたが、調べてもわからないことが多く、専門的かつ有益な内容は書けそうにないので、巡らした考えをブログとして紹介することにした。