投資用マンションの入口

 インフレ傾向にある今、投資に注目が集まっている。私は、自称「知財投資家」として、知財情報に基づき様々な株式に投資を行っているが、一方で不動産にも少し投資している。私は、学生時代に不動産屋のアルバイト経験があり、主要な不動産関連資格も保有している。

 私のコラムやブログの読者の中には、マンション投資をしている、あるいは検討している方も多いと思う。不動産を買うとき、すなわち投資の入口としては、立地や銀行融資が重要になり、こういったハウツーや戦略についての書籍やセミナーは多数ある。また、ネット上にも情報は氾濫している。出口戦略についても同様である。

 今回のブログでは、私の失敗経験に基づき、意外と知られていない重要な入口戦略を紹介したい。

 

1.家賃設定は妥協しない

 この見出しを見て、「当たり前だ」と思った方は、インカムゲイン(家賃収入)の事のみを考えていると思うが、実は、キャピタルゲイン、つまり売却時の利益にも大きく影響するのである。

 投資用マンションの購入者は、当然利回りを参照する。利回りは、賃貸に出している場合、家賃から算出される。「本当は高く設定したかったが、今は安く貸している」と主張しても、その安くしている家賃から「想定利回り」が算出され、ネット上などで案内される。

 そうであれば、売却直前の家賃が高ければよいことになるが、居心地のよいマンションで、手頃な家賃を設定すれば、長期間にわたり契約が更新されることもある。値上げ交渉は簡単ではないため、最初の家賃設定が重要になる。

 フリーレント(最初の数ヶ月間の家賃を無料)や礼金なし、といった利回りの計算に関係ないものは「おまけ」しても、家賃設定は妥協しないことが得策である。

 

2.自分が住むつもりになって投資判断しない

 マンションを一棟買うのではなく、区分所有する場合、自分が住むつもりで物件を選び、投資判断するのがよいと考える方もいるだろう。たとえば、「自分が一人暮らしなら住みたいと思う物件だから、きっと高く貸せるはずだ」といった具合である。

 将来、投資用物件に自分が住むことはまずないので、この様な視点に意味はない。むしろ逆効果である。たとえば、「高層階で眺めがよく、角部屋で2面採光、他の部屋よりも広い」といった物件は、確かに自分が住むにはよい部屋かもしれない。

 ところが、インカムゲイン・キャピタルゲインいずれの観点においても、それらの利点はほとんど良い方向に働かない。

 まず、インカムゲインから理由を説明しよう。賃貸の部屋を探す人は、同じマンション内ではなく別のマンションと比較して決める。私のアルバイト時代の経験でいえば、不動産屋は一度に2件以上違う立地の物件、かつ最初に当て馬を案内するのが鉄則である。その一方で、案内する不動産屋は、その部屋が高いか安いかは、同じマンションの同じタイプで比較してこう語る。「このマンションのワンルームタイプは、月8万円が相場ですから、この部屋は8.5万円で少し高いですね。」といった具合である。1階は別として、2階以上の部屋は、広さや部屋の位置など関係なく一括りにされる。

 オーナーが負担する修繕費や管理費は㎡単価で決まるので、広い部屋の方が、投資の運用コストは高くなるが、家賃はそれほど高くできないのである。もちろん、固定資産税も高くなる。

 次に、キャピタルゲインの理由を説明しよう。特に新築であれば、高層階や角部屋は価格が高く設定される。広い部屋は言うまでもない。しかし前述の通り、家賃相場はそのような利点はほとんど加味されず形成される。したがって、利回りから算出される適正売買価格も抑えられてしまう。

 また、実需(投資用ではなく実際に住む人が購入)であっても、中古相場は、階数や部屋の位置による価格差はほとんどない。ただし、坪単価で相場が形成されることはあるので、同じマンション内であれば広さには意味はある。

 したがって、投資用マンションは、低層階中住戸(角部屋ではない物件)を安く買うことが得策である。