コロナ渦によって、ZoomやTeamsを使ったWeb会議が普及した。コロナが明けて、以前の様なリアル会議に徐々に戻っているが、Web会議はそれなりに定着している。
Web会議が支持されている理由としては、遠方から参加できる、移動時間・コストを抑えることができる、資料が共有しやすい、服装やメイクを気にせず参加できる、そっと内職ができる(別の業務を並行して行うことができる)、など様々であるが、録音または録画が簡単で、AIによる文字起こしで議事録を自動に作成できる点も大きな利点といえよう。
リアル会議で議事録を担当するのは、委員会など多数の組織が参加する会議では事務局が、一般的なビジネスでは営業側の若手が、企業内の会議であれば新人が、その役割を担うのが一般的だが、Web会議では、ホスト役が議事録作成ツールをオンにするだけで済む。
AIを活用したツールで作成した議事録(AI議事録)は、開催日時や参加者、要点などを上手くまとめてくれる。発言漏れもない。時々、同音異義語を意図と異なる漢字で文字を起こすことがあるが、「誤認」と「五人」の間違いなどの様に、参加者が何をどう間違ったのか理解できるような内容が多く、わざわざ指摘するまでもない。本来であれば、文脈から生成AIが正確に意味を理解して議事録を作成してほしいところではあるが、意外と誤植は多い。
AI議事録は、議事録を作成する担当者の負荷を大きく軽減でき、記録の網羅性も高く、メリットは大きいが、あえてデメリットを挙げてみたい。
1.新人や若手の教育機会を奪う
議事録を新人等に任せることで、関係者の名前を正確に覚え、業界用語を理解する。聞き漏らした点があれば、先輩に聞くことで理解が深まる。議事録をAIに頼れば、重要なOJTの機会を逃すことになる。新人等が議事録案作成後に誤字脱字を確認するため、生成AIを活用することは問題ない。もちろん、新人等がいない馴染みのメンバーによる会議であれば、AI議事録で十分だろう。
2.問題発言の記録が残り共有される
会議では、意見を補足説明するため、具体例を挙げて話すことがよくある。人が議事録を作成する場合は、具体例で差別用語が用いられたり、機微な話が出たりしたときであっても、別の表現に直すか、具体例を割愛し意見だけ記載すれば済む。ところが、AI議事録では、第三者が閲覧したときに問題となる発言がそのまま残っている場合がある。もちろん、議事録の修正を依頼すればよいが、AI議事録は、会議直後に関係者と共有されることが多い。
3.事務局の想いを忖度してくれない
委員会や企画会議などでは、事務局が想定している推したい結論や着地点がある場合が多い。その様な場合でも、AIはありのままに議事録を書き上げる。事務局の想いを忖度してくれない。事務局が議事録を作成する場合、仮に意図しない意見が出たとして、それを捻じ曲げて議事録に記載することはできない。しかし、会議後に発言者に意図を再確認する、という名目で事実上説得するなどして、想定していた結論や着地点に近づけることができる。
AI議事録は、要約力に長け、網羅性があり、効率的で便利ではあるが、上記の様なデメリットもある。会議や参加者の特色に応じて上手く活用したい。