生成AIは文房具で「ChatGPTは鉛筆」にすぎない?

 ChatGPTのように人の指示に従って文章を作成するツールなど、AIを使って文章や音声、画像を生み出す技術やプラットフォームは「生成AI」と呼ばれている。

 今、ChatGPTをはじめとする生成AIによって作られたコンテンツの著作権が問題となっている。政府の方針については、知的財産戦略本部によって「知的財産推進計画2023」にまとめられている。

 生成AIの著作権に関する論点はいくつかある。たとえば、AIが作ったコンテンツが学習元の著作物と類似する場合に著作権侵害にあたるか、侵害にあたる場合の責任は誰がとるのか。また、AIが作ったコンテンツは著作物にあたるか、その場合の権利者は誰か、などである。

 知的財産推進計画2023(P31)では、引き続き生成AIに関する著作権の問題について検討していくことになっているが、私は、「生成AIは文房具」の原則で判断してはどうか、と提言したい。誤解をおそれずに換言すれば、「ChatGPTは鉛筆」にすぎない。

 鉛筆であるから、それを使って文章を作成し公表した者には、著作権法上の責任と権利がある。つまり、「鉛筆が勝手に書いた」といった言い訳はできないので、他人の著作物とそっくりであれば、鉛筆を動かした者が責任をとる。一方で、作り出した物は鉛筆を動かした者の著作物である。

 今後、著作権法改正の動きになると思うが、ユーザーにとって分かりづらい複雑な法律になれば、折角のAI立国に向けた機運を損ねてしまう。立ちかえるべき基本理念は単純なものがよい。

 ちなみに、生成AIに指示した文章の著作権について、ChatGPTの見解は下記の通り。

出所:上段は筆者がChatGPTに入力したテキスト、下段はChatGPTがOpenAIのシステムで生成したテキスト