高評価の統合報告書が良い統合報告書とは限らない

 私は、公務やコンサルティング業務で企業が発行する統合報告書について分析・評価・助言することがある。その際に、投資家や表彰団体がどういった視点や基準で統合報告書を評価しているのか参考にする。

 本来、統合報告書は、投資家を主とするステークホルダーが読むことを念頭に、自社の財務・非財務に関する情報を分かりやすく開示し、自社への理解を深めてもらい企業価値を高めることを目的に発行される。このような趣旨からも、競争優位性をアピールすることは重要な視点となる。

 ところが、公的資料のなかで記載されている好事例や各種団体による表彰対象となった統合報告書に対するコメントのなかには、「他社のお手本となる」や「他社の学びになる」ことを評価ポイントとして挙げていることがある。

 確かに、我が国の産業の底上げを考えると、お手本となる統合報告書から他社は学び、よりよい統合報告書を発行して投資を呼び込み、企業価値を高めてほしい、という想いは理解できる。しかし、優秀な企業の事業戦略や知財戦略が、お手本として簡単に学べるような内容では、「競争優位性がない」ことにほかならない。

 もちろん、考え方や哲学を手本として学んでほしい、という意図でコメントしているとは思うが、評価者が重視する軸と、企業が重視すべき軸には、わずかに差異がある。企業においては、いかに革新部分を秘匿にしつつ、その優位性を伝えるかが肝要である。優れた投資家であれば、その点は適切に評価してくれるはずだ。