審決の結果を早く知る方法

競合他社の特許は早く知りたい

 SDI(新着特許情報配信サービス)で、自社事業の障害になりそうなライバル会社の特許出願を発見すると、監視対象として審査経過を定期的にウォッチすることになる。あるいは審査状況に変化があった際に通知してくれるウォッチングサービスで適宜状況を確認する。

 ライバル会社の出願が拒絶査定になれば一安心だが、拒絶査定が確定するのは、拒絶査定不服審判の請求期限が過ぎた後である。もし、出願人から拒絶査定不服審判が請求されると、特許庁の審判によってあらためて査定の当否が審理されるため、特許になる可能性がある。

 したがって、引き続き審理の状況を監視しなければならない。いずれにしても、ライバル会社の特許査定は極力早く知りたいところだ。

 今回のコラムでは、特許情報の癖を観察することで、審判マスタに基づく審判情報よりも早く審決の結果を知る方法について紹介する。なお、「マスタ」とは、「Master Data」を略した表現で各種基礎データを意味する。

 

特許情報標準データの癖

 特許庁の情報提供サイト「J-PlatPat」(下図参照)でも民間の特許情報サービスでも、審査や審判の経過情報の提供は「特許情報標準データ」が元ネタになっている。このデータは、いくつかのマスタから構成される。出願マスタ、登録マスタ、審判マスタなどである。

 

出所:J-PlatPatの経過情報照会画面

 

 ここで、審判の状況を確認するためには、「審判情報」(上図参照、右から2番目のタグ)、あるいは「経過記録」(上図参照、左から1番目のタグ)をクリックして内容確認するのが一般的なアプローチである。

 特許すべき旨の審決が下されると、「審判情報」に「請求成立」と明記され「審決日」を確認できる。あるいは、「経過記録」に「審決」のリンクが表示され、結論が確認できる。

 

マスタによってタイムラグが違う

 ところが、審決が下されてから「審判情報」が更新されるまで2~3週間かかる。当事者である特許出願人は、特許庁から直接通知を受けるため、早く知ることができるが、第三者が特許情報標準データの更新によって審決の行方を知るまでにはタイムラグが生じる。

 ここで、第三者が審決の行方を12週間早く知る方法について紹介したい。ほとんどの場合、「審判情報」よりも先に「出願情報」(上図参照、左から2番目のタグ)の特定の記録の方が先に更新されるのである。それは、「請求項の数記事」である。

 例えば、以前まで「請求項の数記事 出願時(10)」と記載されていたのに、ある日「請求項の数記事 出願時(10)登録査定時(10)」と追記されたとすると、登録査定時の請求項の数が記録されたということで、「特許すべき審決が下された」と判断できる。

 

留意事項

 上記内容は、拒絶査定不服審判において、特許すべき旨の審決を早めに知る手段であって、拒絶査定不服審判不成立の審決に対しては、有効な手段にはならない。また、審判請求人の手続きなどによって情報更新のタイムラグが変動する。

 実は、通常の審査で特許査定を早く知る方法としても「請求項の数記事」を確認することは有効であるが、更に早く査定の行方を知るための方法もある。特許情報標準データには様々な癖があり、審査や審判の状況を一早く知るためのノウハウは他にもいくつかあるので、今後機会をみつけて紹介していきたい。

弁理士 高野誠司